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本書が「東西ミステリーベスト100」(文藝春秋、2013年)の国内編で28位になったというので、読んでみた。
人形はなぜ殺されるという謎をテーマにして次々事件が起きる。一番目の事件は、新作奇術「マリー・アントアネットの処刑」に用いられる小道具の人形の首が鍵のかかった箱の中から盗まれる。そして、そのマリーの首は、ギロチンで首を切られた女の死体の傍に転がっていた。二番目の事件は、盗まれたマネキン人形が列車に轢かれ、その後に別の列車に轢かれた女の死体が発見される。第三の事件は、唐獅子の置物に短刀が差し込まれて殺人が予告されていたのだった‥‥
犯人は誰か、人形を殺す犯人のねらいは何なのか、犯罪はいかにして行われたのか。作者は読者に挑戦状をたたきつける。今日から見れば大時代な物言い、おどろおどろしい舞台設定、おおげさでけれんみのある筋運びなど、犯人あてのパズル小説と割り切って読めば、それなりに楽しめる。人形をめぐるトリックはよく練られていて、アリバイのトリックも巧妙である。
同じ作者の「刺青殺人事件」が32位になっている。これは密室殺人の本格ものである。これも楽しめる。
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主人のゴドーは何かの拍子で召使の男の子の兄をぶって殺してしまった。そこで、男の子には脅して口止めし、それを目撃したヴラジミールには後で口止め料を払う約束をする。ゴドーはこのままではまずいと考え、ヴラジミールの殺害計画を立て、実行のための準備をしている。そのために、ヴラジミールを約束の場所に留め置いて時間稼ぎをしている。ヴラジミールは目撃したことの真の意味が分からず、差し迫った危険のあるのも察知できないままエストラゴンと戯れているのだった。
先の当てのない浮浪者でも、待ちぼうけを食らうのは多分嫌だろう。また、あした死のうと考えている浮浪者でも、きょう殺されるのはきっと嫌であるにちがいない。不条理劇としては、ヴェラジミールとその相棒のエストラゴンは、待ちぼうけの後で、ゴドーに秘かに殺されてしまうだろう。しかし、由緒正しい探偵物語では、一寸の虫にも五分の魂、ヴェラジミールとエストラゴンは、ない知恵を絞ってゴドーの魔の手から逃れ、力を合わせて反撃し、殺人事件の真相を明らかにして幕を閉じるのである。
[1回]
この作品において読者の関心を引くのは、ゴドーとは何者かという謎である。
ゴドーは白い髭があり、男の子とその兄を召使として使っている。兄には羊の番をさせ、男の子には山羊の番をさせている。彼らには食べ物を与え、物置のわらの中に寝泊りさせている。ゴドーは兄をぶつが弟には優しい。そして、兄は病気になっているという。
浮浪者二人のうち、エストラゴンはゴドーを知らないが、ヴラジミールがゴドーを知っている。ヴラジミールはゴドーが来れば自分たちは救われると思っている。彼はゴドーに泣きついて「一つの希望」を語り、「漠然とした嘆願」を行い、お金などの無心をしたようである。それに対してゴドーは「考えてみよう」とあいまいに答え、「家族や、友達、支配人、取引先、銀行預金とも相談し、そのうえで返事をする」と言い訳する。そして、ゴドーは約束の場所に時間までには現れず、男の子を遣わして「今晩は来られないけれど、あしたは必ず行く」と伝えさせる。ヴラジーミルはゴドーが来ないなら救われないので首をつろうと考える。また、エストラゴンンに「いっそのことすっぽかしてやったらどうだ?」と聞かれて、ヴラジミールは「あとでひどい目にあわせられる」と答える。
ここまでくると、ゴドーについてのあらぬ疑いが浮かんでくる。実は、ゴドーは男の子の兄を殺してしまったのである。
[1回]
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