本書が「東西ミステリーベスト100」(文藝春秋、2013年)の国内編で28位になったというので、読んでみた。
人形はなぜ殺されるという謎をテーマにして次々事件が起きる。一番目の事件は、新作奇術「マリー・アントアネットの処刑」に用いられる小道具の人形の首が鍵のかかった箱の中から盗まれる。そして、そのマリーの首は、ギロチンで首を切られた女の死体の傍に転がっていた。二番目の事件は、盗まれたマネキン人形が列車に轢かれ、その後に別の列車に轢かれた女の死体が発見される。第三の事件は、唐獅子の置物に短刀が差し込まれて殺人が予告されていたのだった‥‥
犯人は誰か、人形を殺す犯人のねらいは何なのか、犯罪はいかにして行われたのか。作者は読者に挑戦状をたたきつける。今日から見れば大時代な物言い、おどろおどろしい舞台設定、おおげさでけれんみのある筋運びなど、犯人あてのパズル小説と割り切って読めば、それなりに楽しめる。人形をめぐるトリックはよく練られていて、アリバイのトリックも巧妙である。
同じ作者の「刺青殺人事件」が32位になっている。これは密室殺人の本格ものである。これも楽しめる。
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