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悪党パーカー/人狩り  リチャード・スターク

冷酷非情の悪党パーカーを主人公にした暴力犯罪小説はこれ。
 武器売買にからんだ金銭強奪計画で一緒に組んだ仲間のジルとパーカーの妻リンに裏切られて九死に一生を得たパーカーは、復讐に戻ってきた。リンはおびえて自殺し、巨大な犯罪組織の一級幹部におさまっていたジルは用心のため身を隠す。パーカーの人狩りは止まることを知らず、ついに大ボスの対決にまで進んでいった‥‥
 悪党としての自分勝手な論理を貫徹しようとして、いとも簡単に人を殺したり誰かまわず戦いを挑んだりする。それが巨大組織の大幹部や大ボスであろうと、おかまいなしというところがすごい。
 訳者(小鷹信光)による解説を読むと、「悪党パーカー物語を一作しか書く意思はなく、この第一作の結末でパーカーを非業の死に追いやっていた」と述べている。最後のスーツケースの取り違いでは思わず吹き出してしまう。この終わり方も悪くはない。

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殺し屋  ローレンス・ブロック

不思議の国の殺し屋ケラーの冒険といった趣で、細部の奇妙なリアリテイやシュールな筋立てで描く連作短編集はこれ。
 第一作「名前はソルジャー」では、ローズバーグという田舎町に住んでいる印刷屋の男が殺し屋ケラーの標的だった。ケラーはその男の様子を見るため、彼の店に入って「迷い犬」のチラシを頼む。犬の名前はソルジャーとして。次に印刷屋に行った時、男は「ケラーが自分を殺しに来た者と思った」ということを話し、ケラーも「気づかれていたと思っている」と応える。そして、男は「どうして犬にソルジャーなんて名前をつけたんだ」と聞く。三度目に会った時は、二人は親しくなり、ケラーは「ソルジャーと名前をつけたのは、誰とも知れぬ父親にちなんでいる」ということを明かす。四度目に会った時には、ケラーはこの町に居残ることを男に話し出して‥‥
 作者の職人芸は老練である。絶妙な語り口で読ませ、予想を裏切る展開に引き込み、思いもよらない結末を用意している。十の短編を通して読むと味わいがさらに深くなる。こんな殺し屋がいるのかなと思わせてしまうところがすごい。

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渋江抽斎  森鷗外(その4)

説明的な文章では、まず事物を諸要素に分析して、次にその諸要素を順序立てて簡潔に叙述する。たとえば作者が抽斎を知るに至る話の書き出し。「わたくしの抽斎を知ったのは奇縁である。わたくしは医者になって大学を出た。そして官吏になった。しかるに少ないときから文を作ることを好んでいたので、いつのまにやら文士の列に加えられることになった。その文章の題材を、種々の周囲の状況のために、過去に求めるようになってから、わたくしは徳川時代の事蹟を捜った。そこに武鑑を検する必要が生じた。」続いて武鑑の話に移っていく。
 逸話のアクション場面の描写では、心身の動きを的確に捉え、一気に書き上げる。たとえば本丸の奥女中で奉公していた十二歳の五百が、鬼になっていたずらする若君をこらしめる話。「暗い廊下を進んで行くと、はたしてちょろちょろと走り出たものがある。おやと思うまもなく、五百は片頬に灰をかぶった。五百には咄嗟の間に、その物の姿がよくは見えなかったが、どうも少年の悪作劇(いたずら)らしく感ぜられたので、五百は飛びついてつかまえた。「許せ許せ」と鬼は叫んで身をもがいた。五百は少しも手をゆるめなかった。そのうちにほかの女子たちが馳せつけた。」  
 作者の文体に魅せられた読者は、この玄妙な味と香りに酔いしれる。

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