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ドグラ・マグラ  夢野久作作(その5)

 (※犯人を明かしますので未読の方は読まないでください。)
 この作品の大きなテーマは、「学術のため人類文化のためとかいう名の下に敢然として(行ってきた)非人道的な研究」に対する告発である。
 九州帝国大学教授の正木博士は、狂人解放の基礎理論となる「心理遺伝」の研究のためとはいえ、呉一郎の母親であり元愛人でもある呉千代子を殺し、絵巻物を見せて一郎を狂人にして許婚を殺さしめ、さらに彼をして患者五人の殺傷事件を引き起こさせたのである。結局、正木博士は、自責の念に駆られ、一郎が我が子であると知り、それを契機に自殺してしまう。
 これに対し、研究の怨敵となっている若林博士は、「精神科学応用の犯罪」の研究のためとはいえ、一郎の母親殺しを夢中遊行症として犯人(正木博士)を隠し、許婚のモヨ子を秘かに監禁し、一郎の治療に当たるのである。
 研究者や科学者(そして権力者)は、学術研究(そして大儀)のためなら、罪を犯し個人を犠牲にしても許されるというのか。物語の最後のほうで「私」は叫ぶ。「先生方が、その学術研究のオモチャにしておしまいになった呉家の人たちはドウなるのですか。‥‥(省略)ただ、学術の研究さえできれば、ほかのことはドウなってもかまわないとおっしゃるのですか。」 しかし、この非力な告発はむなしく迷宮の中に閉じ込められてしまう。
 「探偵小説は、良心の戦慄を味わう小説である」とする作者の虚無は深く、救いがないのである。あるいは、世界が破滅に向かって進んでいく時代は、想像豊かな久作を虚無の迷宮に閉じ込めてしまった、と言い換えてもよい。

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ドグラ・マグラ  夢野久作作(その4)

 難解の第三は正木博士の残した書類(作品全体の47%の部分)の内容である。この書類篇は大幅にカットして簡略にしたほうが、探偵小説としてはより完成度が高かったと思われる。  パンフレット「キチガイ地獄外道祭文」では、アホダラ教に託して、精神病者虐待の実情を訴え、精神病医や精神病院を告発し、新しい病院での解放治療を提案している。  脳髄論「脳髄は物を考えるところに非ず」では、脳髄は全身細胞の電話交換局のようなものであるという考えを説いている。この脳髄論について仁賀克雄は「‥‥総ての権利と働きを細胞(人民)のものとし、頭脳(支配者)は単なる各細胞の意思の取次伝達機関としたのである。これは天皇機関説に通ずる論文であり、当時(昭和十年)としては革命的なものであった。」と評している。  論文「胎児の夢」では、「自分を生んだ両親の心理生活を初めとして、先祖代々のさまざまの習慣とか、心理の集積とかいうものが、どうして胎児に伝わって来たか」という「心理遺伝」について説明している。  解放治療、脳髄論、心理遺伝などの考えは、当時において革新的、根本的であり見ようによっては危険なものでもあった。作者は探偵小説を装うことで、自らの論を展開した。作者は創意に満ちた探偵小説を書き上げるとともに、当時の社会を批判する思想を語り世に問いたかったのである。

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ドグラ・マグラ  夢野久作作(その3)

 (犯人を明かしますので未読の方は読まないでください。)  この作品を難解にしている第二は主人公の設定である。主人公の「私」は過去の記憶を失って頭が狂っている。その「私」が自分を取り戻そうとする物語である。  ストーリーが進むにつれて、「私」は自分が、母親を殺し、許婚を殺した男「呉一郎」らしいと思われくる。その「呉一郎」は、心理遺伝によって、唐時代に美女を殺して絵を描いた画家「呉青秀」の心理を受け継いでいる。そのため、因縁のある絵巻物を見ると、「呉青秀」が「呉一郎」に現れてくる。  記憶喪失で狂人の「私」‥‥許婚を殺した「呉一郎」‥‥心理遺伝で受け継がれた「呉青秀」という、一人の人間における三重の関係になっている。  さらに、主人公をめぐる二人の博士の設定が話をより複雑にしている。  正木博士は、因縁の絵巻物を見せることにより、この「呉青秀」を「呉一郎」の上に蘇らせることで心理遺伝の症例にしたいと考えている。一方、若林博士は「私」の記憶を取り戻して「呉一郎」にもどし、事件を引き起こした犯人(正木博士)を明らかにしたいと考えている。そして、そのことを彼の研究の最も重要な例証にしたいとも考えている。

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