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「マルタの鷹」講義  諏訪部浩一著

 ダシール・ハメットの探偵小説「マルタの鷹」を1章ごとに精読して分かったこと、考えたことを講義の形で述べた作品論はこれ。
 この小説は、いろいろな面をもっている複雑な構造の作品である。ヒーローが危険を冒して財宝と美女を手に入れる冒険小説的な面。男が女に出会い最後に結ばれる(あるいは分かれる)恋愛小説の面。犯人探しと謎解きの探偵小説の面。そして、非情な男の生き方と行動を描き出すハードボイルド小説の面。これらの面が重なり合い繋がりあいながら深くてこくのある味わいをかもし出している。
 講義者はこれらの面を小説の終わりの19章、20章で総合的に考察し、次のような結論に至る。<我々が読んできた「マルタの鷹」という小説は、「夢」を見ないと決めている人物が「夢」を見てしまい、その「夢」に裏切られ、空虚な「現実」へと戻っていく物語である。>
 ありていに言えば、ハードボイルドの意匠を剥ぎ取り、ロマンチックなベールをひんめくると、非情を気取った女たらしのしがない探偵と、金のためなら色仕掛けや殺しも厭わない悪い女との、仁義なき戦いなのである。ハードボイルド小説の主人公は、夢破れて、苦い幻滅としょぼくれた日常の中に戻っていくしかないようなのである。
 今年の9月に、早川書房から小鷹信光訳による改訳決定版が出ている。この「講義」を受講しての改訳である。

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殺人百科  コリン・ウイルソン作

 15世紀から1960年までの欧米の有名な殺人事件を網羅した事典はこれ。
 原著(ピットマンとの共著)は、犯人の名のアルファベット順に300以上の事件を取り上げているそうだが、この訳本では、日本の読者に興味のあると思われるものを60ほど選び出して編集している。
 その一番目の事件を紹介すると、「霧の夜の戦慄」と題して、切り裂きジャックを簡潔な読み物にまとめている。1888年8月31日から11月8日までの間に、ロンドンのイースト・エンドで5件の殺人事件が起こった。被害者は5人とも女で、ナイフで切られ、内臓をえぐりとられた者もいた。事件はロンドン市中にパニックを起こした。作者は最後に、犯人について次のように推理している。犯人は若い医学生あるいは医者であり、犯罪が突然に止んだのは精神病院に入れられたか、死んだかしたためであろう。
 作者は、殺人の研究のための基礎資料としてこの事典を編集し、実存主義の立場から分析し考察しょうとしている。
 22年後に続編として出版された「現代殺人百科」(シーマンとの共著)は1962年から1983年までの殺人事件を扱っている。
 この2冊を読んだ後では、ちょっとした殺人事件のニュースにあまり驚かなくなる。恐怖と戦慄に満ちたおぞましい物語も、続けて読みすぎると、陳腐で退屈でうんざりする読み物になってしまうのは如何ともしがたいのである。

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消えたエリザベス  リリアン・デ・ラ・トア作

 1753年にロンドンでエリザベスという娘がいなくなった実際の事件について、多数の書物や資料から事実を再構成して秘密の核心に迫った、推理小説的ノンフィクションはこれ。
 「気立てはよいがご面相のまずい貧乏娘」18歳のエリザベスは奉公先から休みをもらった。1月1日に叔母の家を訪ね、そこから我が家に帰る途中、行方不明になってしまう。家族や地域の人々が心当たりを探しまわったり新聞に記事を出したりしたが、彼女の行方は杳として知れなかった。それから4週間も過ぎた1月29日の宵に突然我が家に帰ってきたのである。ボロをまとい泥にまみれ、見る影もなくやつれ衰え、まっさおな顔をして。
 エリザベスが話すには、二人の男にさらわれて、ある家の部屋に監禁されていたのを、隙を見て逃げ出してきたという。売春宿の女将、ジプシーの老婆たちが逮捕され裁判が始まった。裁判が進むにつれ、エリザベスの証言がどうもちぐはぐで、おかしなところが出てきた‥‥
 作者は話の途中に「中幕 犯罪鑑定人家のために」を入れて、読者の推理を促す。そして話の終末には「むすび 犯罪鑑定家への結論」を置いて、作者の自信に満ちた推理を披露する。この本はジョン・ディクスン・カーに捧げられ、本格推理の味わいになっている。

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