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短編集(三)(四)は歴史小説である。(三)の表題作「西郷札」は作者の処女作である。この小説は、明治十年の西南戦争を時代背景に、薩軍が発行した軍票を題材にしている。車夫になった主人公、義妹、その夫である高級官吏の人間関係を配置して一つの物語をつむぎだしている。フィクションに現実感を与えて描き出す手練はみごとである。
第二作の「くるま宿」では明治九年の時代を背景に、世の中に取り残され落ちぶれていく士族の悲しみを描いている。その物語から時代の中に生きる人物を印象的に浮かび上がらせる技法は確かである。
(四)の表題作「佐渡流人行」では、上役の佐渡支配組頭、金山の取り締まりの役人、その妻、妻との仲を疑われた水替人足などの人物を配置して、少しずつ明らかになってくる話の筋に惹かれて、最後のどんでん返しまで一気に読ませる。読者の興味をつかんで離さない巧みな構成と語り口。天性のストーリーテイラーである。
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松本清張の初期短編の中から選んで現代小説(一)(二)、歴史小説(三)(四)、推理小説(五)(六)の六巻に分けて編んだ傑作短編集(新潮文庫)はこれ。
現代小説(一)(二)の中で作者の思想がよく表われた作品といえば、やはり『或る「小倉日記」伝』であろう。主人公の田上耕作は、痴呆のような風貌をした肢体に不自由のある男である。母子二人の貧しい暮らしで、仕事にも就けず社会的に恵まれなかった。その彼が、小倉時代の森鴎外の事跡を調べることに生きがいを見出す。一生懸命取り組んでいる耕作の姿に、作者自身の恵まれなかった境遇や社会的に報われないかもしれない創作活動を重ねて、共感をもって描いている。
作者はこの作品で芥川賞をもらっている。この小説について、坂口安吾の「感想」にはこうある。「‥‥文章甚だ老練、また正確で、静かでもある。一見平板の如くででありながら造形力逞しく底に奔放達意の自在を秘めた文章力であって、小倉日記の追跡だからこのように静寂で感傷的だけれども、この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力があり、その時はまたこれと趣きが変りながらも同じように達意巧者に行き届いた仕上げのできる作者であると思った。」さすが安吾というべきか。その後の、推理小説界における清張の活躍を予見している。
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「昭和ミステリーの全貌を鳥瞰する」短編46のアンソロジーはこれ。
佐藤春夫「指紋」1918年から原りょう「少年の見た男」1988年まで、46人46編の短編が選ばれている。前から順に読んでいくと、それぞれの作家の個性とともに日本ミステリーの流れが浮かび上がってくる。知的な謎解き、怪奇幻想もの、奇妙な味わいの作品、社会風俗ものなど、作者や時代によって形を変えて現れてくることが分かる。
特に印象に残った作品は、夢野久作「死後の恋」、小栗虫太郎「聖アレキセイ寺院の惨劇」、横溝正史「探偵小説」、赤川次郎「ところにより、雨」、逢坂剛「暗殺者グラナタに死す」など。これらの作品は個性的な語り口や巧妙な話術で読者を魅了する。
なお、この「大全集」の補巻ともいうべき「昭和ミステリー大全集 ハードボイルド篇」も出ている。ハードボイルドの短編が19収められている。それぞれの作家が自分の持ち味を出したりハードボイルドに挑戦したりしている。
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