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犯人を捜す探偵が犯人になってしまうという皮肉なめぐりあわせを描く、フランス「ヌヴォ・ロマン」の先駆的作品となった実験的な小説はこれ。
政府機関調査局の秘密警官ワラスは、ある都市に出かけ、デュポン前教授殺害の調査を始める。無政府主義のテロリスト組織による政治的な暗殺の疑いがあった。地元の警察署長ローランの話によると、デュポンは強盗に襲われたらしい。友人の医者に連れられて病院に行き、手術台の上で死んだ。その死体は調査局らしき者がどこかへ運び去ったという。署長自身は、本当は自殺なのに、犯罪らしく見せかけたのではないかという疑いももっている。
小説の中に、いろいろな人物が登場してくる。カフェの主人、なぞなぞを出す男、殺しをやろうとする男、その首領、つんぼの老女中、酔っぱらいの男、レインコートの男、緑色の外套の男、デュポンの元妻、デュポンの私生児らしい青年などなど。ワラスの調査は遅々として進まない‥‥最後に、ワラスが事件の現場に行き犯人を張り込んでいると、思いもかけない展開になってしまう。
この作品はミステリの形式を借りて、迷宮的な都市空間において不条理な運命から逃れられない悲喜劇を描いた小説である。ミステリの新しい分野として期待して読むと、おそらくがっかりするだろう。ミステリに読み飽きて、いっぷう変った小説を読みたいと思っている読者に向いている。
この小説と構造が似ているのは、安部公房の「燃えつきた地図」である。安部の作品では、失踪者を探す探偵が、最後には迷宮的な都市の失踪者になってしまうのである。
[3回]
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「わたしは探偵、犯人、被害者、証人、その四人のすべて」のコピーで有名な、フランス・ミステリーの人気作はこれ。
ミシェルとドムニカという、幼なじみの二人の娘がいた。ミシェルは大金持ちの伯母からの遺産相続人。ドムニカは銀行のしがない従業員。ある日、二人は偶然に出会って一緒に暮らすようになる。ところが、住んでいた別荘が火事になり、ひとりの娘は焼け死に、もう一人は顔と手に大火傷を負って倒れている。一命をとりとめた「わたし」は、記憶を失っていた。「わたし」はミシェルなのか、それともドムニカなのか‥‥
複雑なストーリーで技巧的な構成、計算された人間関係によく練られた表現、「わたし」をめぐる謎とサスペンスに満ちた解明。作者は最後に真相を明らかにするが、その解釈が二とおりにできるように「作者の罠」が仕掛けられている。
最近、新訳(平岡敦訳、東京創元社)が出たので、また読んでみて驚いた。文章がこなれていて読みやすい。訳者によってこんなにも違うのか。さらに「訳者あとがき」を読んで、この作品をすっかり見直した。
[2回]
殺人課の課長ブロの「二重の死」をめぐる事件を語って人生の不条理を悲劇的に描く、フランスの文学的ミステリの古典的名作はこれ。
パリ警視庁司法警察殺人課のフレデリック・ブロは、現場の捜査に情熱を燃やすぴか一の刑事だったが、同僚たちの予想を裏切って、現場から離れて指揮を執ることになる課長を引き受ける。そのブロが、連絡なしに上司との待ち合わせをすっぽかしたのである。不安に思った上司は、部下をブロの自宅に行かせる。リヴィエール刑事がブロの自宅を訪ねると、部屋の中には、ブロと、彼にそっくりの男が倒れていた。一人は瀕死の状態で、もう一人は死んでいた。どちらも銃で撃たれていて、どちらの男のそばにもピストルが落ちていた‥‥
このようにして始まった「前代未聞の事件」が驚くべき展開をたどって語られる。ブロの「二重の死」の謎が徐々に明らかになっていくと、皮肉な運命のいたずら、人生の不条理が、悲しみとともに鮮明に浮かび上がってくる。調査にもとづく司法警察の正確な描写、人間味あふれる繊細な心理描写、心にしみる情景描写、エスプリのきいた語り口、しゃれた小粋な話の終わり方など文学的な味わいに満ちた佳品である。
この作品を気に入った読者には、警部長時代のブロの活躍が楽しめるミステリ「U路線の定期乗客」がおすすめである。
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