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消しゴム  アラン・ロブ・グリエ作

  犯人を捜す探偵が犯人になってしまうという皮肉なめぐりあわせを描く、フランス「ヌヴォ・ロマン」の先駆的作品となった実験的な小説はこれ。
 政府機関調査局の秘密警官ワラスは、ある都市に出かけ、デュポン前教授殺害の調査を始める。無政府主義のテロリスト組織による政治的な暗殺の疑いがあった。地元の警察署長ローランの話によると、デュポンは強盗に襲われたらしい。友人の医者に連れられて病院に行き、手術台の上で死んだ。その死体は調査局らしき者がどこかへ運び去ったという。署長自身は、本当は自殺なのに、犯罪らしく見せかけたのではないかという疑いももっている。
 小説の中に、いろいろな人物が登場してくる。カフェの主人、なぞなぞを出す男、殺しをやろうとする男、その首領、つんぼの老女中、酔っぱらいの男、レインコートの男、緑色の外套の男、デュポンの元妻、デュポンの私生児らしい青年などなど。ワラスの調査は遅々として進まない‥‥最後に、ワラスが事件の現場に行き犯人を張り込んでいると、思いもかけない展開になってしまう。
 この作品はミステリの形式を借りて、迷宮的な都市空間において不条理な運命から逃れられない悲喜劇を描いた小説である。ミステリの新しい分野として期待して読むと、おそらくがっかりするだろう。ミステリに読み飽きて、いっぷう変った小説を読みたいと思っている読者に向いている。
 この小説と構造が似ているのは、安部公房の「燃えつきた地図」である。安部の作品では、失踪者を探す探偵が、最後には迷宮的な都市の失踪者になってしまうのである。

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