「わたしは探偵、犯人、被害者、証人、その四人のすべて」のコピーで有名な、フランス・ミステリーの人気作はこれ。
ミシェルとドムニカという、幼なじみの二人の娘がいた。ミシェルは大金持ちの伯母からの遺産相続人。ドムニカは銀行のしがない従業員。ある日、二人は偶然に出会って一緒に暮らすようになる。ところが、住んでいた別荘が火事になり、ひとりの娘は焼け死に、もう一人は顔と手に大火傷を負って倒れている。一命をとりとめた「わたし」は、記憶を失っていた。「わたし」はミシェルなのか、それともドムニカなのか‥‥
複雑なストーリーで技巧的な構成、計算された人間関係によく練られた表現、「わたし」をめぐる謎とサスペンスに満ちた解明。作者は最後に真相を明らかにするが、その解釈が二とおりにできるように「作者の罠」が仕掛けられている。
最近、新訳(平岡敦訳、東京創元社)が出たので、また読んでみて驚いた。文章がこなれていて読みやすい。訳者によってこんなにも違うのか。さらに「訳者あとがき」を読んで、この作品をすっかり見直した。
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