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すべてがFになる  森博嗣 

意味深長な題で引き付け、巧みなトリックの組み合わせで新しい密室殺人を創り上げたゲーム小説はこれ。
 講談社文庫の裏表紙の簡潔な紹介文によると、「孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵がこの不可思議な密室殺人に挑む。」とある。
 登場人物が平板でリアリティがないとか、事件の設定が仮想的で作り物めいているとか言っても仕方がない。萌絵に「現実って何でしょう?」と問われて、探偵役の犀川が「現実とは何か、と考えた瞬間にだけ人間の思考に現れる幻想だ」と答える。登場人物も殺人事件も物語の進展もすべては密室殺人の成立に奉仕させられている。ないものねだりをしないで読めば、ゲームとしての謎解きを楽しむことができる。
 トマス・ハリスの「羊たちの沈黙」や京極夏彦の「姑獲鳥の夏」に似ているところがあるようだが、物語の味わいはまるで違う。サイコと妖怪とコンピュータの違いである。どれもそれなりに味わい深い。

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Yの悲劇  エラリー・クイーン作(その2)

 厳格なパズル小説の中で、今でも人気を誇る古典的な名作はこれ。
 本書はヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」や「僧正殺人事件」から影響を受け、それらを乗り越えるべき作品として執筆されたと思われる。いずれの作品もストーリーにおいて、時間と場所を明示しての叙述、呪われた一族の富豪の屋敷を舞台に連続して起こる殺人、探偵側の捜査と情報収集、衝撃的な真犯人の指摘、手がかりになる情報を基にしての推理などの順を踏んでいる。特に、ミステリの技法としては、始めの犯人の隠し方や終わりの犯人の処し方が似ている。クイーンの創意は、探偵に哲学的な課題を与え、悩める探偵を文学的に描いているところである。探偵役のドルリー・レーンが犯人を裁くためにいろいろ手を尽くし苦悩する。それが犯人の指摘にも劇的な効果をあげている。
 ちなみに、「アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100」(1995年)の「ザ・ランキング」表を見ると、日本で人気の高い「Yの悲劇」や「僧正殺人事件」はおろか、クイーンの作品やダインの作品は一冊も入っていないのが興味深い。パズル小説には、推理に必要な(あるいは不必要なものも含めて)、細々とした情報や説明がどうしても入ってくる。読者に次のページをめくらせるスリルやサスペンスが持続せず途切れてしまうのが、多数派になれない理由である。

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孤島の鬼  江戸川乱歩作

 波乱万丈で奇想天外な乱歩ワールドが味わえる探偵怪奇小説はこれ。
 主人公の「私」(蓑浦)の恋人が密室状態の家の中で、短刀で胸を刺されて殺された。その犯人を追いかけていた素人探偵の深山木も、たくさん人のいる海水浴場の真ん中で刺されて殺される。さらに、その犯人と思われた者が、素人探偵の諸戸に尋問されている最中に、ピストルで撃たれて殺されてしまう。この恐るべき殺人鬼の正体を暴こうと、「私」と友人の諸戸は和歌山県の沖合いに浮かぶ孤島に向かう‥‥
 主人公の「私」に対する諸戸の恋情、不可思議な密室殺人とその推理、曲馬団の少年軽業師と一寸法師とせむし男、体のくっついている双生児からの人外境便り、孤島の不具者製造屋敷、財宝のありかを示す暗号とその解読、鍾乳洞の迷路と水攻めや暗黒恐怖、孤島の「鬼」の醜悪怪奇な大陰謀などなど。乱歩好みの薄気味悪い妄想世界がこれでもかこれでもかと生々しく描かれる。しかし、荒唐無稽と思われる物語にもそれなりの納得のいく背景を示し合理的な説明を与えている。やはり、さすがに探偵小説の作家である。この本を子供の時分に読んだなら、夜中にトイレへ一人では行けなくなる。この乱歩ワールドの毒性を弱めて薄くし、少年向けの読み物にしたのが少年探偵団シリーズである。

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