波乱万丈で奇想天外な乱歩ワールドが味わえる探偵怪奇小説はこれ。
主人公の「私」(蓑浦)の恋人が密室状態の家の中で、短刀で胸を刺されて殺された。その犯人を追いかけていた素人探偵の深山木も、たくさん人のいる海水浴場の真ん中で刺されて殺される。さらに、その犯人と思われた者が、素人探偵の諸戸に尋問されている最中に、ピストルで撃たれて殺されてしまう。この恐るべき殺人鬼の正体を暴こうと、「私」と友人の諸戸は和歌山県の沖合いに浮かぶ孤島に向かう‥‥
主人公の「私」に対する諸戸の恋情、不可思議な密室殺人とその推理、曲馬団の少年軽業師と一寸法師とせむし男、体のくっついている双生児からの人外境便り、孤島の不具者製造屋敷、財宝のありかを示す暗号とその解読、鍾乳洞の迷路と水攻めや暗黒恐怖、孤島の「鬼」の醜悪怪奇な大陰謀などなど。乱歩好みの薄気味悪い妄想世界がこれでもかこれでもかと生々しく描かれる。しかし、荒唐無稽と思われる物語にもそれなりの納得のいく背景を示し合理的な説明を与えている。やはり、さすがに探偵小説の作家である。この本を子供の時分に読んだなら、夜中にトイレへ一人では行けなくなる。この乱歩ワールドの毒性を弱めて薄くし、少年向けの読み物にしたのが少年探偵団シリーズである。
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