ヴァン・ダインとくれば、エラリイ・クイーンを取り上げないわけにはいかない。ダインのパズル・ミステリをさらに推し進めて究極の形にしたのが、クイーンの「読者への挑戦状」付きのミステリ、国名シリーズである。国名シリーズは10作あり、この中で特に評価の高いのが「オランダ靴の謎」「ギリシャ棺の謎」「エジプト十字架の謎」である。
「クイーンのこれはまだ読んでいなかったな」などと何年かおきに、思い出した時に読むというふうに国名シリーズと付き合ってきた。探偵役のクイーンという主人公も、犯人役の悪人像も、犯罪の不思議さ・不気味さも、論理的で精緻な推理に圧倒されて影が薄くなってしまい、どうも頭に残っていない。謎解き第一で、物語のおもしろさは二の次になっている。そこがやや残念である。その中で一番印象に残っているのが本書である。
オランダ記念病院で大富豪のドーン老夫人が殺される。針金で首を絞められている夫人が手術台の上で発見される。手術室の控え室にいた時に犯行があったと思われる。足の不自由な外科医を真似た偽ものと思われる犯人が控え室に入ってきての犯行らしい。その控え室には看護婦も付き添っていたのに。この大胆不敵な犯行に対してクイーンの推理が切れ味鋭く冴えまくる。
[4回]
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