ニューヨークのマンハッタンとおぼしき架空の街アイソラを舞台に、警察署に勤務する多数の刑事たちを主役にしてシリーズ化に成功した警察小説は、エド・マクベインの87分署シリーズで、1956年から始まり2000年までで53冊を数える。その記念すべき1作目がこれ。
刑事たちの個々の人物を立ち上げ書き分ける力量、実際の捜査方法や実務内容の知識、分かりやすくスピーディに展開させる語り口、発端におけるセンセーショナルな犯行の提示、さらに連続して起こる犯行による物語への引き込み、謎解きや犯人探しを生かした物語など、第1作からプロ作家の技量がいかんなく発揮されている。
87分署シリーズは10冊ほど読んだが、多種多様な事件や犯人だけでなく、語り口やストーリー展開に工夫が凝らされていたり、新しい刑事の登場や人間関係の進展があったりなど、それなりに楽しめた。
その中でもお勧めは、8作目の「殺意の楔」である。十月のある金曜日の一日の話である。スコット家殺人事件と87分署乗っ取り事件が交互に語られる。最後にこの二つの話がつながるおちに、あなたはプッ吹き出すか、ニヤリと頬を緩めるか、ホッと胸を撫で下ろすか。ストーリーテーラーとしての職人芸があざやかである。
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