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羊をめぐる冒険  村上春樹作 (その2)

主人公「僕」の話が進むにつれて、一度会ったら忘れられないような、印象的で謎めいた人物がつぎつぎ登場する。交通事故で死ぬ「誰とでも寝る女の子」、僕を今でも好きなのに離婚する妻、耳専門のモデルをしている女性、アルコール中毒の共同経営者、死にかけている右翼の大物、ビジネスライクの秘書、ラディカルなクリスチャンの運転手、失踪していて突然手紙をよこした昔の友人「鼠」、北海道のいるかホテルのフロント係、その二階に住んでいる羊博士、緬羊飼育場の管理人、頭からすっぽりと羊の皮をかぶっっている羊男などなど。中でも最も中心になる謎は、「星のマークのついた羊」である。
 この不思議な羊をめぐって、話はミステリアスに進み真相が明かされていく。謎の羊はずっと昔ジンギス汗の体内に入っていたという。それがまず1935年に満州で羊博士の中に入り込む。次に、1936年に刑務所に入っていた右翼思想家の中に移りこむ。それから、1978年に北海道の別荘で「鼠」に出会うのだった‥‥
 この羊は人間の中に入り込んで支配し、巨大な権力機構を築きあげ、「人間と人間の世界を一変させてしまうような巨大な計画」をもっているらしい。あらゆる対立が一体化する、完全にアナーキーな観念の王国をを目指しているという。その中心には「鼠」と羊がいることになる。最後には、この鼠と羊に悲喜劇的な運命が待っている。この白昼夢を読者はどう読み解くのだろうか、興味深いところである。

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