人間の中に入り込んで支配するという不思議な羊を探し求める、謎めいた冒険譚はこれ。
妻と離婚した「僕」は、耳専門のモデルをしている女性と知り合う。また、北海道にいるらしい昔の友人「鼠」から手紙と羊の写真をもらう。そして、大物右翼の秘書という男から「背中に星形の斑紋がついている羊」を探すよう脅迫的に依頼される。その羊を「鼠」が知っているらしい。怪しげな運命にそそのかされ耳の彼女に励まされながら、「僕」は「鼠」と謎の羊を探しに東京から北海道に旅たつ‥‥
作者はアメリカの現代小説(フィッツジェラルド、チャンドラー、カポーティ、カーヴァー、サリンジャーなど)に学んだ技法やセンスに磨きをかけて、神秘的な羊を探し求める空想的な物語を創り上げた。このほら話を最後までおもしろく読ませる語り口と筋運びはさすがである。
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