本格の謎解きをいじって幾つもの解決を提示し、最終となるはずの解決をさらにひっくり返してしまうブラック・ユーモア・ミステリはこれ。
国書刊行会発行のカバーにある、簡潔にして要領を得た紹介文を借りると、「探偵作家ジョン・ヒルヤードの邸で作家たちを集めて行なわれた殺人劇の最中、被害者役の人物が死体となって発見された。殺されたのは放蕩な生活で知られる名うてのプレイボーイ。パーティには彼の死を願う人物がそろっていた。事件の状況から窮地に立たされたピンカートン氏は、その嫌疑をはらすため友人の探偵シェリンガムに助けを求めた。錯綜する証言と二発の銃声の謎、二転三転する論証の末にシェリンガムがたどりついた驚くべき真相とは?」
物語の中には犯人にいたる手がかりと誤りに導く手がかりが幾つもちりばめられ、目くらましをくらわせている。構成も凝っていてプロローグ(新聞記事、報告書)、ピンカートン氏の草稿、エピローグの三部構成である。犯人が分かると、この構成の必然性に納得がいく。ミステリの愛読者なら探偵役のシェリンガムと同じ結論にたどり着くが、皮肉の好きなすれっからしの愛読者なら、たぶん真犯人を当てることができそうである。それにしても完全犯罪をはぐらかし迷宮に引き込む「第二の銃声」の皮肉が利いている。
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