多くの個性的な警官たちが多種多様な犯罪や事件に取り組むという警察小説の利点を生かして、一年一冊の物語を十年十冊の物語につないで、警察大河小説ともいえるものに創り上げたのが、スウェーデンの作家マイ・シューヴァルとペール・ヴァールー共作によるマルティン・ベックシリーズである。
その時その時の犯罪やその社会背景を描くことにより、その時代の推移や社会の変化を写し取ろうという壮大な試みは、福祉国家の光と影、スウェーデン社会の歪みと陰りを描き出している。
シリーズ全10巻の中で評価の高いのが第4作のこれ。真夜中のストックホルム郊外で、2階バスの中にいた大勢の乗客が射殺されるという事件が起きる。軽機関銃で皆殺しにされたらしいのだ。誰が何のためにやったのか。警察は被害者の身元確認から捜査を始める。8人の射殺体の中にベック主任警視の部下であるステンストルム刑事が混じっていた……
もし本作を読んで気に入ったら、第1作の「ロゼアンナ」から順に読んでいってほしい。第10作の「テロリスト」を読み終えるころには、ユニークで個性的な警官たちの生き方とともに、スウェーデン社会の10年史が彷彿と浮かんでくるにちがいない。
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