戦後の本格探偵小説の中で人気の高いのはこれ。
瀬戸内海に浮かぶ小島、獄門島。網元として島全体を支配している鬼頭家。その鬼頭家の三人姉妹が次々と殺されていく。それも俳句に見立てて。第一の殺人は、「鶯の身をさかさまに初音哉」の見立てで、花子の死体が寺の梅の木に逆さにつるされている。同じように、第二、第三の犯行が続く。
探偵役の金田一耕助が推理を働かせて世にも不思議で奇怪な真相にたどり着く。
欧米の本格ミステリから学び、特にカーの作品に感激した作者は、日本の風土に根ざした怪奇色のある本格探偵小説を創り上げた。同じ作家の作品で、見立て殺人の趣向としては、「悪魔の手毬唄」「犬神家の一族」なども人気がある。
リアリティのない「化け物屋敷」と悪口を言われながらも、本格ものの遊び心は息抜きの楽しみにはもってこいである。ただし、続けて読むと同工異曲の感がしないでもない。忘れたころにまた読んでみるのがいいかもしれない。何でもありの犯罪を題材にした小説の中で本格ものは、何でもありの恋愛小説における純愛ものと並んで、しぶとく生き続けるにちがいない。
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