探偵による真相の解明が、悪魔の出現に至るミステリはこれ。
舞台は第二次世界大戦が終わって十数年後のニューヨーク。主人公はタイムズ・スクェアに探偵事務所をもつ私立探偵ハリー・エンジェル。探偵は、戦前活躍したスゥイング・バンドの歌手ジョニーの安否確認と行方捜査を依頼される。まず、彼はジョニーが入院している陸軍病院を調査に訪ねると、‥‥占星術、ヴィードゥ教、悪魔崇拝に関わる者たちが登場し、殺人が相次いで起きる。背後で暗躍しているのは何者なのか。
作者はハードボイルドのスタイルを踏襲し、オカルトの衣装をまとわせ、あっと驚く怪奇幻想の解決で結ぶ。合理的な解明を期待する読者は、不可解な事件や謎めいた犯罪が、悪魔のいるオカルト世界を想定すると合理的に解釈できるという二律背反のジレンマ陥る。
この奇妙な味わいは何なのか。小説の中で悪魔が探偵の「わたし」を笑うように、作者はハードボイルドの探偵小説をパロディにして笑っているのである。
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