小説の中で、特に大きなテーマになっているのが二つある。 一つは美しく自己中心的な女ミルドレッドとの不幸な恋愛関係である。このミルドレッドとの「絆」は、恋愛を装った強迫観念のようなものであり、隷属的であり、束縛的である。この絆から逃れ抜け出すためには、何度も傷つき後悔し、自己嫌悪に陥り、長い時間をかけることが必要だった。
もう一つは、人生とは何か、人生いかに生きるべきかという人生観をいかに築くかというテーマである。人生をどう考えたらよいかという問題は、フィリップの心をとらえ自由を束縛している。老詩人に暗示された「ペルシャ絨毯」の謎(すなわり人生の謎)をどのようにして何と解くのか。この小説に仕込まれた大きな仕掛けである。話のクライマックスは、主人公なりの人生に対する答えを見つける。その答えは本を読んでのお楽しみである。
六十歳過ぎてからもう一度読み返してみると、さすがに若いころの感動はなくなったが、ストーリーのおもしろさを堪能し、モームの小説づくりのうまさに感心した。
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