ありそうもない不可能犯罪のトリックが明らかにされ、考えもつかなかった真犯人があばかれた時、「え、本当にそうなの?」ともう一度読み返したくなるミステリはこれ。
この小説では、密室の殺人にかかわる二つの問題が提出される。学者の書斎の問題とカリオストロ街の問題である。「二つの殺人が犯されたが、まるで殺人犯の姿が見えなかったばかりでなく、空気よりも軽いといったふうなのだ。証拠の事実によれば、この人物は第一の犠牲者を殺してから、文字通り消え失せてしまった。さらにまた証拠の事実によれば、犯人は第二の犠牲者を、両端に目撃者のいる、人っ子一人いない通りの真中で殺害した。しかも、だれ一人として犯人を見かけておらず、雪の上に足跡一つ残っていなかったのである。」(三田村裕訳 早川書房)と作者は1ページ目で不可能犯罪を要約し、話が始まるのである。
ジョン・ディクスン・カーのミステリでは、本書とともに「火刑法廷」「曲がった蝶番」「ユダの窓」「皇帝のかぎ煙草入れ」などが本格ミステリイのマニアに高く評価されている。これらは再読したくなり、二度楽しめること間違いなし。
なお、この5冊とも未読の人は、老婆心ながら、まず最初に、比較的ストリーが分かりやすく、トリックがすっきりしている「皇帝のかぎ煙草入れ」から読むようにお勧めする。
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