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ラトクリフ街道の殺人  ジェイムズ、クリッチリー共著

 1811年にロンドンで起きた、ラトクリフ街道の二家族連続殺人事件について、関係資料をもとに事件を再現し捜査過程を分析して真相を推理したノンフィクションはこれ。
 ある冬の夜に服地商の貧しい一家(若い夫、妻、乳児、徒弟の少年)が大槌で殴られナイフで切られて皆殺しにされていた。当時の「警察署」は警官が少なく事件の捜査に未熟で、犯人の逮捕は困難であった。この事件から12日目の夜に同じ界隈で、居酒屋の一家(亭主、その妻、女中)が鉄の棒で砕かれナイフで切られて殺されたのである。幸い、その孫娘と下宿人が難を逃れた。
 この連続した殺人事件は全国的な恐慌をもたらした。犯人逮捕の懸賞金が提供され、多くの情報や証言が集められ、不審な者が逮捕された。やがて、ウィリアムズという若い水夫が厳しい尋問を受けた‥‥
 国民に大きなパニックを起こした恐怖と謎の事件という意味では、この事件は、1887年の「切り裂きジャック」事件と似ている。しかし、後者が近代的な警察組織の取り組みであったのに対して、前者は前近代的な組織で、事件の真相解明よりも民衆のパニックを鎮めるための事件解決を優先したもののように思われる。

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