「絶妙な語り口と鋭い人間描写で読者を魅了する」(カバーの紹介)モームの短編集はこれ。
モームの百点以上になる短篇の中から18点選ばれている。その短編集の始めに置かれている「エドワード・バーナードの転落」を読んでみる。大都会シカゴに生まれ育ったエドワードは、才色兼備のイザベルと婚約しているが、南海諸島のタヒチの支店に仕事の見習いに行っていた。二年後にはシカゴに戻って本社の社員として働く予定であった。しかし、二年が過ぎてもシカゴに戻ってくる気配がない。そこで、エドワードの親友で、イザベルに片想いしているベイトマンが、エドワードの様子を調べにタヒチに行く。そこでベイトマンは、小さな店の店員に落ちぶれているエドワードを目にする‥‥人間の幸せな生き方とは何なのかと作者は読者に問いかける。
どの短篇にも、生きている人間がいて、その人間が織り成すおもしろい話があり、起承転結の物語がある。相矛盾する要素を抱える複雑な人間性に驚き、皮肉なめぐり合わせの人生を味わい、巧みな語り口に酔いしれる。人間に乾杯!人生に乾杯!モームに乾杯!
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