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モルグの殺人  エドガー・アラン・ポオ作

ドイルのホームズを少しさかのぼると、ミステリの創始者エドガー・アラン・ポオのディパンに行きつく。探偵ディパンの登場する第一作は短篇「モルグの殺人」である。
 パリのサン・ロック区のモルグ街にある家屋の四階で事件が起きる。部屋の中では、煙突の中に逆さまに押し込まれているレスパネー嬢の死体が発見された。しかも殺人のあった部屋は密室になっている。また、中庭では首も胴も無残に切りきざまれたレスパネー老婦人の死体がころがっていた。
 この異常な犯罪に取り組むのが、天才型の探偵オーギュスト・ディパンである。彼は分析的知性をはたらかせ、新聞記事や関係者の証言、現場の観察などをもとにして事件の謎を推理する。
 この短篇小説は始めから終わりまで一気に読ませる。最後の一行を読み終えて「何という小説なのだ」と驚嘆する。読者に与える効果が計算され、実にたくみに語られた作品なのである。
  「ポオの探偵小説は厳密には三編、広く考えても五編しかない」(江戸川乱歩)その五篇とは「モルグの殺人」「マリー・ロジェの謎」「盗まれた手紙」「黄金虫」「お前が犯人だ」の五つである。
 さらに彼の他の作品をも読んでみると、怪奇幻想や戦慄恐怖の物語とともに、ミステリ味のある話や奇妙な味のある作品がたくさんあり、それがまたおもしろいのである。創元推理文庫「ポオ小説全集(全四巻)」でみると、65の作品が収められている。まだ読んでない人は幸せである。これからそれが読めるのだから。

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