近年世界的にヒットし、日本でも高く評価されたスウェーデンのミステリはこれ。全三部作で、第一部が「ドラゴン・タトゥーの女」、第二部が「火と戯れる女」、第三部が「眠れる女と狂卓の騎士」という副題がついている。それぞれ、謎解き小説、犯罪小説、法廷小説としても楽しめるという。
第一部を読んでみると、密室状態の小島から大実業家一族の孫娘が失踪するという事件が過去に起こっている。その調査にジャーナリストの主人公が依頼される。それを助けるのがもう一人の主人公、女性調査員である。調査が徐々に進み、ススリリングな展開を含みながら、謎解きが図られる。やがて、驚愕すべき真相と恐るべき犯人が明らかになり、劇的な結末を迎える。
謎解き小説としてもそれなりにおもしろいが、しかし、この小説は何と言っても女主人公リスベット・サランデルの魅力に負っている。加えて、もう一人の主人公ミカエル・ブルムクヴィストとの組み合わせの妙である。
リスベットは、コンピュータを駆使する、型破りで有能な二十歳台の調査員である。しかし、態度は反抗的で非社会的、ドラゴンの入れ墨を入れたり鼻にピアスをつけたりなど奇抜な格好をしている。かって、精神病等の判定を受け後見人の監視下にある。一方、ミカエルは、正義感の強いジャーナリストで、美しくセクシーな四十歳台の男性である。訳者の解説をみると、リスベットは、やさしくて力持ち、自由奔放で奇想天外な「長くつ下のピッピ」の現代大人版であるし、ミカエルは、優等生タイプで人好きのする「名探偵カッレくん」の大人版であるようだ。この二人が簡単に結ばれるわけはなく、二人の関係がどうなるのかも物語の興味になっている。
第二部、第三部と話が進むと、リスベットの過去が明らかになり、リスベットにまつわる犯罪の全貌が姿を現す。呪われた運命の下に生まれたヒロインは、ハンディキャッップのあるスーパーギャルに変身し、絶望的な状況においても抵抗と反撃をつらぬき、破壊と再生を果たす。第四部、第五部の構想があったらしいが、作者の急逝により永遠に失われたのは残念である。
[4回]
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