南仏のラブラネ町における原子力発電所の建設推進とその反対運動を背景に、ヨハネ黙示録の四騎士にまつわる見立て殺人事件を中心に、キリスト教の異端カタリ派の歴史と秘宝伝説、テロリズムをめぐる思想的対決を配置して病める現代世界を劇的に描く本格推理小説はこれ。
南仏にある財界の帝王ロシュフォールの別荘で、ドイツのミュンヘンの骨董商が殺されるという事件が起きる。彼は、まず石球で頭を殴り殺され、次に弓矢で胸を射られていた。そして、馬小屋では白い馬が殺されていた。まるでヨハネ黙示録の一節をなぞるように。だが、事件当時別荘にいた関係者全員にはアリバイがあったのである。
第二の殺人事件は、カルカンヌの城の塔内で、重要容疑者が縊れて死ぬという事件が起きる。塔は内側から扉のかんぬきがかけられていて、密室状態にあった。彼は自殺したのか。不思議なことに、塔の下では赤毛の馬が射殺されていた。白い馬、赤い馬に続いて、黒い馬、青い馬にまつわる殺人がおきるのか‥‥
探偵役のナディア・モガール「嬢ちゃん」は二転三転させながら迷推理を披露していく。一方、もう一人の探偵役ヤブキ・カケルはカタリ派に関する文書や秘宝を探すことに強い関心を示し、さらに、他者への愛と正義を求めるシモーヌとの思想的な対決を求めていた。
ナディアの悪戦苦闘の推理に、カケルの名推理、探索、対決が加わり、やがてそれらが繋がりあい響きあってパズルの最後の一片がぴたりと収まると、季節は、まがまがしい猛暑の夏から冷え冷えとした晩秋のセーヌ川へと流れ移っていく。
本書は矢吹駆シリーズ二作目。初期三部作の中では一番評価が高い。一作目の「バイバイ、エンジェル」から読むとおもしろさがさらに増す。
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