ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」を下敷きに、その続編をミステリ仕立てに書いたというので、読んでみた。
カラマーゾフ事件が起きて13年後のこと、内務省モスクワ支局未解決事件課特別捜査官イワン・カラマーゾフが故郷の地方都市に帰ってきた。カラマーゾフ家の次男であるイワン捜査官は、父親殺しの真相を明らかにすべく、父親フィードルの墓を掘り返し棺を開けた。その頭骨を検分すると、犯行に使われた凶器は、真犯人の私生児スメルジャコフが使ったという文鎮ではなく、無実の罪に服した長男ドミートリーが持っていた胴の杵であった。もと見習い修道士で今は教師をしている三男アレクセイ、「事件」の元凶となった女性グルーシェニカなど「兄弟」に登場するおなじみの面々が顔をそろえる。やがて殺人事件が起こり、謎が謎を呼ぶ。さらに思わぬ展開が繰り広げられ、現在の殺人事件と13年前のカラマーゾフ事件の真相が明かされる‥‥
小説「カラーマゾフの兄弟」を本格推理小説に再創造する場合、誰を犯人にするのが一番自然なのかと考えた時に、当然あの人になるにちがいないという人物が犯人になっている。ただ、犯人となる人物像と理由づけに対して、リアリティのある描写と納得のいく説明がとても難しくなる。作者の挑戦は必ずしも成功したとは言えないが、「前任者」の物語を引き継ぎ、本格推理の枠組の中で、奔放な想像力を働かせて創り上げた物語は、それなりに楽しめる。作者の健闘を讃えたい。
[2回]
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