第一部にカラマーゾフ家における愛憎劇を、第二部に神をめぐる思想劇を、第三部に父親殺しの犯罪劇を、第四部に真相解明と裁判劇を配置して四部構成とし、おもしろくて力強い物語を創り上げたロシア文学の傑作はこれ。
カラマーゾフ家は、淫蕩で強欲な父親フョードル、直情径行な無頼漢の長男ドミートリィ、聡明で虚無主義の次男イワン、修道院の見習い僧で純真無垢な三男アリョーシャ、下男で私生児のスメルジャコフなどに加えて、長男の許婚カテリーナや悪女グルーシェンカが親子兄弟の愛憎に絡み合う。
やがて父親が殺され、悪女グルーシェンカをめぐって父親と争っていた長男ドミートリィが逮捕される。彼は無実を主張するが、不利な状況証拠がそろっていた。次男イワンにも父親殺しの動機はあったが、三男アリョーシャはイワンの無実を信じて励ます。イワンは真相を明らかにするため下男のスメルジャコフを訪問する‥‥
このような筋立てからも分かるように、殺人事件の後は推理劇になっている。真犯人が分かった後も、裁判劇ではどんでん返しがあり、さらに思いもよらない結末が待っている。ミステリ・ファンにも大いに楽しめる趣向になっている。
ただ残念なことには、この作品の紹介では、ほとんどの本が始めから犯人をばらしているので、ミステリ的な趣向は半減している。それでもおもしろく読めるのは、文学作品として力強く優れているからであろう。
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