(※「マリー・ロジェの謎」の犯人を明かすので未読の方は読まないでください。)
さらに驚くべき研究の紹介がある。それはデュパン探偵第二作「マリー・ロジェの謎」の再評価についてである。この作品は現実に起きた事件を題材に作られた小説である。筆者が述べている事柄を、現実の事件と小説の世界とを対比させてまとめてみる。
(現実の事件) (作品の事件)
時代場所 1841年ニューヨーク 18**年のパリ
被害者 メアリ・ロジャース マリー・ロジェ
タバコ屋の売り子 香水店の売り子
関係者 ジョン・アンダースン ルブラン
タバコ屋の店主 香水店の店主
探 偵 作家ポー フランス人デュパン(知的遊民)
背 景 アンダースンの執筆依頼 警視総監Gの探偵依頼
5千ドルの支払い 気前のよい申し出
犯 人 アンダーソンの疑い 恋人(親しい仲の秘密の知人)
殺人容疑をそらす 以前の駆け落ちの相手
すなわち、作家ポーは、容疑者から口止め料をもらい、この作品を発表することによって事件の隠蔽に一役買っていたことになる、というのである。この新しい解釈は説得的である。第一作「モルグ街の殺人」と第3作「盗まれた手紙」の切れ味鋭いデュパンの推理に比べて、第2作「マリー・ロジェの謎」が枝葉に走り曖昧模糊とした印象をうけるのはなぜかという疑問によく答えているからである。
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