感覚的な表現、細々とした描写、気の利いたユーモア、主人公の諜報員としてのプロ意識、秘めたる敢闘心など、チャンドラー流ハードボイルド系スパイ小説はこれ。
主人公の「わたし」は英国情報機関WOOC(P)局員である。生科学者レイヴンの失踪に関わっているらしい情報ブローカーのジェイという人物を探る任務を与えられる。やがて物語の舞台は、ロンドンからレバノンへ、さらにロンドンから太平洋の原爆実験島へと移り、「わたし」は二重スパイの汚名を着せられ逮捕される。そして、ハンガリーに「送還」された先に待っていたものは、拷問にも等しい洗脳の恐怖だった‥‥
「わたし」を罠にはめた本当の裏切り者は誰なのか。孤立無援の「わたし」は、遠い国にある牢獄から生きて戻ってこれるのか。あっと驚くクライマックスが待っている。
ストーリー展開が複雑で紆余曲折しているので、すんなりと頭に入らないところも、チャンドラーのミステリと共通している。
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