20世紀のアメリカをテーマに主としてアメリカのミステリを100冊選び、各作品を論じてアメリカの正体に迫る、異色のミステリガイドはこれ。
最も多く取り上げられた作家はエラリー・クイーンで、3節に分けて5作品が論じられている。時代の進展にともなって「作品の変遷と作家の転変」が語られ、短いが優れたクイーン論になっている。また、ダシール・ハメットは3作品が選ばれ、鋭く深い作家論が展開されている。数ページなのに長篇の評論を読んだ気分にさせられる。トマス・ハリスにいたっては、レクター博士3部作を取り上げ、サイコ・キラーの作品の運命を辿る。これも深慮遠謀のの作品配置で、さりげない名人芸に思わずうなってしまう。
選ばれた作品の中には、ミステリとは言えないような作品がある。たとえば、ラヴクラフト、フォークナー、ハインライン、ヴォネガット、ディック、キイスなどの作品。これらの作品がミステリの間に配置されている。これが示唆に富んでいて、興味深くおもしろい。
[1回]
PR
お探し物がありましたら、こちらからどうぞ