クイーンの「Yの悲劇」のように、パズル・ミステリにおいてトリックが奇抜だったり犯人が意外だったりする場合、もう一度読み返したくなる。その中でも極めつけのミステリはこれ。このおもしろさは映画やテレビでは難しい、小説特有のものである。
イギリスの田舎、キングズ・アボット村で裕福な地主のアクロイドが鍵のかかっている書斎で殺されているのが発見される。探偵役のポアロは、ベルギーの元刑事で、引退した私立探偵。この村で自適な生活を送っているが、事件の関係者である姪の依頼で、事件の捜査を始める。アクロイドの家族の者や友人、使用人たちのアリバイが調べられて……最後に、ポアロは容疑者全員を集めて、トリックを見破り真犯人を明らかにする。
この事件が終わって半世紀以上を過ぎてから、事件を徹底的に研究した論文「アクロイドを殺したのはだれか」(ピエール・バイヤール著)が発表された。それを読むと、驚くべき真相と思ってもいなかった真犯人が告げられる。しかも、それが作者アガサ・クリスティより(そして探偵ポアロより)も説得的で、もっともらしいのである。そうすると、さらにもう一度読み返したくなる。
[2回]
PR
お探し物がありましたら、こちらからどうぞ