ハメット、チャンドラーとくると、どうしてもロス・マクドナルドを取り上げたくなる。この作家は、初期の作品は、チャンドラー流の書き方を学び、その影響を受けていることがうかがえる。亜流の域を超えるのはなかなか難しかった。しかし、中期の作品になると、自分なりの方法を確立し、独自の境地を開いた。さらに、後期の作品では、その方法に円熟味が増したが、探偵の個性は失われ、テーマや手法がマンネリ化し行き詰まってきた。
主人公のリュウ・アーチャーは、1940年代後半から70年代のロスアンゼルスの街で私立探偵を営み、誠実に仕事をやり遂げる。
本書の場合は、結婚したばかりの妻がいなくなったので、探してほしいという夫からの依頼で、探偵が捜査を始める。関係者に会いに行って質問し、事実を集めていく。やがて殺人事件が起こり、新たな謎が生まれる。次第に事件の裏に秘められた複雑な人間関係が浮かび上がってくる。そして奇妙でグロテスクな真相が解明される。
この作品は、本格ミステリの味わいのある私立探偵小説となった。ちなみに、「本格ミステリーを語ろう!」(原書房)の巻末にある「路標的海外名作推理小説一覧」を見ると、ハードボイルド探偵小説で挙げられてあるのは、ロス・マクドナルドの「ウィチャリー家の女」と本書だけである。
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